親が死んで遺言書を見つけたけどどうしたらいい?遺言書・遺留分について徹底解説!
相続において、遺言は非常に重要な役割を果たします。しかし、遺言が存在する場合でも、相続人の中には遺言に不満を抱くことがあります。特に遺言によって自分の法定相続分が侵害されていると感じた場合、その不満は大きなものとなります。ここでは、ある具体的な事例をもとに、遺言の効力や遺留分の問題について、わかりやすく解説します。
遺言とは?
遺言は、亡くなった方(被相続人)が自分の財産を誰にどう分けるかを明確にするための手段です。被相続人が遺言書を残していれば、通常その遺言に従って遺産が分割されます。
事例の概要
私は2人兄妹の長女です。父はすでに亡くなり、母が所有していた自宅の土地と建物が遺産として残っています。母が亡くなった後、遺品を整理していたところ、母の遺言書が見つかりました。
その遺言書には「すべての遺産を兄に相続させる」と記されていました。私は遺産を相続することが出来ないのでしょうか?
遺言の効力について
今回の事例では、母親の遺言により「すべての遺産を兄に相続させる」とされています。このような遺言書が有効であれば、兄が全財産を相続することになりますが、妹には法定相続分が全くない状態となってしまいます。
遺言の効力を争うことができる場合
遺言書が見つかったとしても、その効力が必ずしも有効であるとは限りません。特定の条件下では遺言の効力を争うことが可能です。以下のようなケースが該当します。
1. 遺言の方式違反
遺言書には法的に定められた形式があります。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などがあり、それぞれの方式を守らなければ遺言は無効となります。たとえば、自筆証書遺言であれば、全文が被相続人自身の手書きであることが要件です。
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2. 偽造や詐欺
遺言書が偽造されたり、詐欺によって作成された場合、その遺言は無効とされます。この場合、裁判所にその証拠を提示して、遺言無効の確認を求めることが必要です。
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3. 被相続人の意思能力がない場合
遺言を作成する際、被相続人に意思能力がなければ、その遺言書は無効となる可能性があります。意思能力とは、遺言の内容を理解し、自らの意思で財産分配を決められる能力を指します。例えば、認知症などで判断能力が低下していた場合、この点が争点となることがあります。
遺言の検認手続き
遺言書が見つかった場合、まず行うべきは「遺言書の検認手続き」です。検認は、遺言の内容を家庭裁判所が確認し、その後に遺言が正式なものとして扱われるようにする手続きです。
ただし、2020年7月10日以降、法務局に預けられている自筆証書遺言については、検認が不要となっています。
遺留分とは?
遺留分とは、法定相続人に対して法律上最低限保証されている相続分のことです。遺言によってすべての財産を特定の相続人に渡すと書かれていても、他の相続人が全く財産を受け取れないということにはなりません。法律は相続人に対して遺留分という最低限の権利を保障しており、この権利は侵害されません。
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遺留分の割合
遺留分は、相続人の立場によって異なります。例えば、子供が相続人である場合、遺留分は法定相続分の半分とされています。今回の事例では、相談者は兄とともに母親の子供であり、相続人として法定相続分があります。その半分が遺留分として保証されています。
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遺留分侵害額請求の手続き
もし遺言によって相続分が著しく減少した場合、相続人は「遺留分侵害額請求」という手続きを通じて、自分の遺留分に相当する額を他の相続人から請求することができます。
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1. 遺留分侵害額請求の内容
遺留分を侵害された相続人は、兄に対して「遺留分に相当する額」を金銭で請求することができます。遺留分侵害額請求は、遺留分に相当する金額を請求する権利であり、これにより遺留分相当額を受け取ることが可能です。
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2. 遺留分侵害額請求の期限
遺留分侵害額請求を行うには、期限が定められています。遺留分を侵害されたことを知った日から1年以内に請求しなければならず、また相続開始から10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は時効となります。したがって、遺言書が発見された場合には、早急に専門家に相談し、手続きを進める必要があります。
特別受益の持戻し免除とは?
特別受益とは、生前贈与や遺贈など、特定の相続人が被相続人から特別な利益を受け取っている場合のことを指します。一般的には、生前贈与された財産も相続財産に含めて計算し、相続人間で公平に分割しますが、2019年7月1日以降の法改正により、婚姻期間が20年以上の配偶者間で居住用不動産を贈与または遺贈した場合、その財産は特別受益の対象外となり、持ち戻しを免除されることがあります。
公正証書遺言と遺留分
公正証書遺言は、公証人が作成するため、非常に強力な法的効力を持ちます。このため、公正証書遺言を無効とするのは非常に難しいとされています。遺言の無効を主張するよりも、遺留分侵害額請求によって自分の権利を主張することが現実的な解決策となる場合が多いです。
遺言があった場合の対応まとめ
遺言が見つかった場合、その内容に納得できない相続人は、以下の対応を検討することが重要です。
- 遺言の検認手続き
まずは、家庭裁判所で遺言の検認手続きを行います(法務局保管の遺言書を除く)。 - 遺言の無効を主張するかどうか
遺言書が無効であると考えられる場合、家庭裁判所に遺言無効確認の調停や訴訟を提起します。 - 遺留分侵害額請求
遺留分が侵害されている場合、相続開始から1年以内に遺留分侵害額請求を行い、侵害された遺留分相当額を請求します。
まとめ
相続において、遺言と遺留分は非常に重要な要素です。遺言によって特定の相続人に財産が多く渡ることがあったとしても、他の相続人には遺留分が保障されており、その権利を行使することで、公平な分割を主張することが可能です。今回の事例のように、遺言書が見つかった場合でも、遺留分を侵害されていると感じたら、まずはその権利を守るために迅速に行動し、専門家に相談することが大切です。
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